(右から:TSC田中さん・アトリエやっほぅ!!三塚さん・アトリエやっほぅ!!中島さん・TSC岡本さん)

「アトリエやっほぅ!!」と「京都ふぉんと」〜ご近所から生まれた共創アート〜

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    20235月、京都市伏見区を拠点に、「福祉」と「デザイン」をつなぐフォント·パターンプロジェクトとしスタートした「京都ふぉんと」。

    生活介護施設京都市ふしみ学園で創作活動を行なっている「アトリエやっほぅ!!」のアーティストたちが描いた原画が、タカラサプライコミュニケーションズ(以下、TSC)のデザイナーとの共創によって、フォントやパターンとして社会に広がっています。

    今回、アトリエやっほぅ!!の中島さん、三塚さんと、京都ふぉんとの発足メンバーであるTSCの田中、岡本に、プロジェクトのこれまでとこれからについてお話を伺いました。

    ご近所から始まった「京都ふぉんと」

    京都市伏見区にある施設「アトリエやっほぅ!!」。
    最初の京都ふぉんとのフォントやパターンの原画は、このアトリエで生まれました。そして、20263月現在では、5施設6団体に拡大しています。

    (画像引用元:アトリエやっほぅ!! 京都市ふしみ学園)

    http://atelieryoohoo.com/

    TSCの田中は、頻繁にアトリエへ足を運んでいるそうです。

    田中
    「今日来ても、『久しぶりやな~』という感覚がなかったです。いつ来ても、ワクワクさせてもらえる場所ですね」

    岡本
    久しぶりといえば、印象に残っていることがあるんです。以前久々にこちらにお邪魔したとき、やっほぅ!!のアーティストが『岡本さん来てるんやね!』と、うれしそうに声をかけてくださったんです。
    新しく出会ったアーティストから手づくりのカードをいただいたこともあります。アーティストのほうから壁をスッと越えて来てくださる感じが、本当に嬉しくて」

    (思い出話に花が咲きます)

    実は、TSC とアトリエやっほぅ!!は、歩いて 10 分ほどの「ご近所さん」です。
    とはいえ、最初から互いの存在をよく知っていたわけではありません。

    田中
    「私たちがご当地フォントプロジェクトに参加するには、福祉施設とペアでの参加が必須でした。正直、最初に声をかけたアトリエやっほぅ!!さんに『うちはちょっと』と断られていたら、暗礁に乗り上げていたと思います。
    快く『やってみましょう』と言っていただけたことが、京都ふぉんとが動き出す最初の一歩でした。今振り返っても、最初にお声がけしたたのがやっほぅ!!さんで本当によかった、と強く感じています。
    中島さん、その節はお話を聞いてくださって本当にありがとうございました」

    中島さん
    「京セラさんのギャラリーで展覧会をしたり、企業さんとのご縁はあったんですよ。でも、TSC さんがこんな近くにあるとは全然知らなくて。あとから『歩いて 10 分くらいの距離なんですよ』と聞いて、『ええーっ!!』ってびっくりしましたね(笑)
    地元同士でつながれることが、とても嬉しかったです」

    人と地球にやさしい印刷、その先に見えたもの

    京都ふぉんとが生まれるずっと前から、TSC では「人と地球にやさしい印刷」に取り組んできました。
    1990 年代から、水なしオフセット印刷やベジタブルインキ、FNC認証紙など、環境配慮型の印刷を行なってきました。
    2000 年代以降は、色弱の方にも見やすい配色を提案する「カラーユニバーサルデザイン」や、寄付金付き社会貢献型印刷用紙「チャリティペーパー」などにも取り組んでいます。

    田中
    「『環境にやさしい』『人にやさしい』印刷を続けるなかで、次の一歩を模索していた時期に出会ったのが、東京·渋谷発の『シブヤフォント』の活動でした。
    シブヤフォントさんとオンラインで勉強会をさせていただいて、『ご当地フォント』として全国にスキームを広げていく、というお話を伺いました。
    そのとき、印刷会社としての本業に近いところで、サステナブルな社会に貢献できる取り組みになるのでは、と感じて京都でいち早く手を挙げました。そこから始まったのが、京都ふぉんとのストーリーです」

    とはいえ、当時 TSC には福祉施設とのネットワークはほとんどありませんでした。
    そこでシブヤフォントに相談し、紹介してもらったのがアトリエやっほぅ!!だったのです。

    (座談会はアトリエをお借りして実施。アーティストさんの作品に囲まれて話も盛り上がりました)

    作家の個性を「機能するデザイン」に変える仕事

    アーティストが描いた文字や絵は、TSCのデザイナーの手によって、フォントやパターンとなり、「共創アート」として発表されています。

    (作品を見ながら「あの時はこうだったよね~」と振り返り)

    岡本
    「アーティストごとに、特性や作風、個性がありますよね。それをフォントやパターンとして、不特定多数の人に使ってもらえる形に変換していくのが、共創アートにおけるデザイナーの役割だと考えています。
    機能する形を心がけつつ、作家さんの個性をできるだけそのまま生かしてデザインに落とし込む。
    『これが一番いい形だ』という正解があるわけではないと思うのですが、もしかしたらどこかにベストな形があるかもしれない……と思いながら、一つひとつのモチーフと向き合っているような気がします」

    中島さん
    「うちも 10 年以上、展覧会のチラシを職員がデザインしてきたんですよ。芸術大学出身の職員も多く所属しているので。
    でもそうすると、どうしてもアートっぽさを優先して、少しクセのあるビジュアルになりがちなんですよね。
    京都ふぉんとのプロダクトは、どちらかというと工業デザインに近いような気がします。誰にとっても見やすく、使いやすいデザインになっている。デザインにはこういう役割もあるんだと、改めて感じて、面白かったですね」

    祇園祭の手ぬぐいから、コーヒー豆まで。ひろがる「京都ふぉんと」

    京都ふぉんとのパターンやフォントは、少しずつ、しかし確実に社会の中に広がりはじめています。たとえば、祇園祭の手ぬぐい。

    (原画と並べてみました)

    もともとはクライアントのデザインで制作していたものを、「京都ふぉんとのパターンでつくってみませんか?」と TSC から提案し、採用されたグッズです。

    三塚さん
    「商品化したグッズを見せると、アーティストたちは『いいね!』とすごく喜んでくれます。パッと見たときの表情で、喜んでくれているなって感じるんです」

    京都ふぉんとのグッズは他にも、

    • アトリエ発の図案を使ったパッケージで販売されたコーヒー豆
    • ワークショップイベントで販売されたグッズ
    • 京都市役所駅地下街での子ども向け SDGs イベント
    • 東山区役所での図書館の案内サイン

    などなど、少しずつ増えています。

    田中
    「イベント会場で子どもたちがたくさんブースに遊びにきてくれて、ものすごい熱気だったこともありましたよね。
    NHK 京都放送局のニュースで取り上げてもらえたこともあって、『京都ふぉんと、知ってるよ!』って声をかけてもらうこともありました。少しずつ知っている人が増えてきた実感はあります」

    中島さん
    「とはいえ、『京都ふぉんと』という存在を、まだ知らない人の方が多いのも事実ですよね」

    岡本
    「そうですね。でも、流行り廃りのあるものにはしたくないので、広告で一気にバーンと広げるというより、少しずつ、着実に広げていきたいですね。
    お祭りやイベントの現場で 「目に留まる機会」 を重ねていくのが、一番いいのかなと思っています」

    35年後に描く「共創」の輪

    では、京都ふぉんとのこれからは、どこへ向かっていくのでしょうか。
    少し先の未来について、みなさんにお聞きしてみました。

    中島さん
    「施設はどうしても、一般の方からは見えづらかったり、立ち寄りにくい場所にあることが多いんです。
    だからこそ、近くのコミュニティスペースで月に一度のマーケットを開いたり、みんなが立ち寄れるイベントができたらいいな、とぼんやり考えています。
    京都ふぉんとのワークショップを、そうした地域の場と結びつけられたらうれしいですね」

    三塚さん
    「京都·伏見という酒どころにあるので、酒蔵さんの蔵をお借りして展示なんかができたら楽しそうですね」

    岡本
    「僕は、京都ふぉんとに関わる施設や企業が一堂に会する『お披露目会』のような場をつくることも、今後の夢としてありますね。
    今はそれぞれのイベントで個別にお会いすることが多くて、横のつながりがあまりありません。
    そろそろ京都ふぉんととして、参加している施設の方や作家さん、支援員さん、採用してくださっている企業の方々が集まる場を一度つくってみたいです。
    雑談ベースでもいいので、『こんなことやってみたいね』と話し合える時間が持てたら良いなあと思います」

    田中
    「今は京都市内の6施設で取り組みんでいますが、数年後には、京都府内でもう少しエリアを広げていけたらと思っています。
    パターンやフォントのバリエーションが増えれば、使っていただく側の選択肢も広がりますしね。
    小学校への出前授業のような取り組みも増やしていきたいです。子どもたちと一緒に描いたものが、京都ふぉんとのパターンとして採用されるような流れができたら、とても素敵だなと思います」

    最後に

    みなさんに、「京都ふぉんとを知らない人にどんなことを伝えたいか」聞いてみました。

    中島さん
    「デザイナーさんや企業の方だけでなく、まちに暮らす一人ひとりの方に、『ちょっと面白いな』『誰かに話してみたいな』と思っていただけたら、それだけでうれしいです」

    三塚さん
    「『サステナブルな社会に貢献する取り組み』というと、少し敷居が高く聞こえてしまうかもしれません。
    でも京都ふぉんとは、もっと気軽に関わっていただける活動です。ぜひ気軽にお問い合わせいただけると嬉しいです」

    田中
    「まずは、京都ふぉんとの Web サイトを覗いてみていただけたらうれしいです。どんなパターンやフォントがあるのか、知ってもらうところから始まると思うので」

    岡本
    「難しく考えず、『こんな活動があるらしいよ』と、周りの人に話のネタにしてもらえるだけでも、とてもありがたいです。口コミや SNS で、少しずつ広がっていくような活動であればいいなと思っています」

    京都のまちのどこかで、ふと目にしたパターンや文字が、実は京都ふぉんとのデザインかもしれません。
    なんだか気になる、面白そうだなと思っていただけたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

    京都ふぉんと公式サイト
    https://www.takara-sc.co.jp/kyoto_font/